世界中の金融市場が動揺
長年、自由貿易とグローバル化は、資本主義の繁栄と世界経済の成長にとって必要不可欠で当たり前のものと考えられていた。過去貿易交渉が懸念材料になったことがあったが、当事国同士の不均衡是正の域を出ていない。それだけに、今回の自由貿易体制そのもの否定するトランプ関税の衝撃は計り知れない。不透明感の増幅というより未体験ゾーン突入との不安心理が広がった。自明の理であったものが崩壊して、世界中の金融市場が動揺している。
今期の会社予想は相当厳しい
4月後半には決算発表が始まるが、会社予想は相当厳しい数字になりそうだ。昨年、日本から米国への輸出額は約21兆円あり、24%の関税なら約5兆円である。全てが上場企業分ではなく負担率も不明だが、これはTOPIXの利益総額50兆円の10%に相当する。円高もあり決算発表時点では減益予想が避けられないであろう。
コロナショックに近い衝撃
アベノミクス以降、TOPIX構成企業のEPS予想が10%以上減益になったことが2度あった。2015年のチャイナショックと2020年のコロナショックである。 チャイナショック時の減益率は実際には11%程度に留まったが、株価はオーバーシュートして30%近く下落している。 今回は、ヘッドラインの衝撃と不安心理の増幅という急落の構図から、2020年3月のコロナショックに近いかもしれない。コロナ渦では、その後実体経済が被った損失の甚大さや収束までの期間が3年数か月という長きに渡った。しかし、当時日経平均が底値をつけたのは、コロナ渦が始まった直後、下げ始めから概ね15~18営業日目である。下げ率はやはり30%に及ぶ急落だったが、その後はV字型反発に転じ3カ月でほぼ全値戻しとなった。
一気に大底をつける下げパターンを想定
今回、コロナショックとの比較では日柄でまだ半分、下げ率では7割程度であり、下げ余地を意識せざるを得ないが、コロナ時と同じくショック安の様相で一気に大底をつける下げパターンを想定している。
今後は、内容に関わらずトランプ関税の概要が明らかになり、マクロ経済に加え各業種、企業ごとの影響度の分析が進むこと自体が落ち着きを取り戻す背景になるだろう。
個別では?
4月4日現在、TOPIXの予想PERは13倍台まで低下して、バリュエーション面でも10%程度の減益は織り込んだ。ここからの下げはあったとしてもオーバーシュートとみる。個別では京都FG(5844)ソニー(6758)三菱重工(7011)など。
光世証券・エグゼクティブ・マネージャー 西川雅博氏プロフィール
1960年奈良県生まれ 大和証券入社 1990年より光世証券 法人部、営業部長、現在コンサルティンググループ担当
提供:株式市場新聞社 marketpress.jp
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