グローバル経済は意外なほど安定的
トランプ大統領就任から半年が経過した。この間、発信された言動の激しさと不透明感とは裏腹に、グローバル経済はリセッションもなく意外なほど安定的に推移してきた。
金融市場でも、相互関税導入発表時に一時的な混乱があったが短期間で回復した。喧伝された世界経済の混乱や衰退は現在のところ杞憂に終わっている。足元では、6月の失業率が4.1%と予想に反して低下し、ISM非製造業景況感指数も改善を示した。あからさまに利下げを促すトランプ大統領だが、皮肉にも労働・景気動向は早期利下げを遠ざける状況である。
米国テック企業の業績は好調を持続
さらに、米国テック企業の業績は好調を持続し、株価上昇の牽引役となっている。堅調な株価は資産効果を通じて個人消費消費など景気指標にプラスに働き、好循環が生じる可能性も考えられる。リスクオンの状況が年後半も続くとみるのがメインシナリオだろう。
LTCMショック時に非常によく似ている
1990年以降、米国株(S&P500)が本格的調整局面入りを示唆する10%以上下落した事例は、今回の4月を含め11回あった。確かに大半のケースで半年以上の長期調整を余儀なくされたが、過去、今回のように短期で20%前後急落してV字回復となったことが2回あった。1998年のLTCMショックと2020年のコロナショックの急落である。
特に今回の直近高値からの下げ模様とその後3カ月間の反発の形状は、LTCMショック時に非常によく似ている。当時は、国際金融の根幹を揺るがす事案が金融緩和を促し、その後のITバブルにつながる2年に及ぶ株価上昇を招いた。
利下げカードが切られた場合には?
「遅すぎる」とのトランプ大統領の緩和圧力はともかく、今後、景況感悪化やインフレ鎮静化を受けて利下げカードが切られた場合には株価へのプラス影響は大きいとみる。
関税の不透明感が残る中、日経平均は予想外の早さで4万円を回復した。外国人投資家の買い越しと寄与率の大きい半導体関連株の大幅反発が背景である。NT倍率は4月のボトム13倍台前半から6月末には14.2水準まで1ポイント以上上昇し、急落前昨年の平均値近くまで戻した。
バリュー株にも物色が広がる
今後半導体株と日経平均に傾斜した上昇は一旦勢いが止まる可能性がある。6月の日銀短観の大企業製造業業況判断指数では、自動車・金属製品など4業種で悪化したが、全体では小幅上昇で意外な底堅さを示した。ドル円相場は企業の想定レート近辺で安定しており、設備投資計画も旺盛である。今のところ期初予想に対する業績悪化懸念は強まっていない。関税交渉次第とは言え、今後はリスクオンの場面で景気敏感株などのバリュー株にも物色が広がるとみている。
個別には?
期待が先行せず抑制的な株価形成が続く日本株だが、逆に言えば反動安の大幅調整も起こりにくい。構造要因とも言え、昨年8月と今年4月の急落とその後のV字型急反発が似たような形状になったのは偶然ではないだろう。戦略としては、大きなキャピタルゲイン狙いではなく高配当のインカムゲインと有価証券オプションなどで+αを目指すのが得策だろう。
日々の値動きの印象に対して実際のリスクは限定的と考える。個別には信越化学(4063)野村HD(8604)東京ガス(9531)など。
光世証券・エグゼクティブ・マネージャー 西川雅博氏プロフィール
1960年奈良県生まれ 大和証券入社 1990年より光世証券 法人部、営業部長、現在コンサルティンググループ担当
提供:株式市場新聞社 marketpress.jp
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