新しい時代認識が必要
9月中間決算を目前に日経平均が連日高値を更新するなど予想を超える強い相場となった。確かにソフトバンクGやアドバンテストなどの一部テック銘柄の寄与度が大きいが、かつての指数先物の短期売買が幅を利かす相場ではない。景気敏感株中心にバリュー銘柄も広範囲に物色され水準を切り上げている。
高値警戒感が取り沙汰されて久しいが、現実はむしろ順張りのリスクテイクが正解だった。市場分析には、長く続いたデフレ時代の枠に囚われない新しい時代認識が必要だろう。
ポイントは金利と株価の関係
ポイントはインフレ的経済の定着を前提にした金利と株価の関係だ。直近の日本の消費者物価指数(CPI)上昇率は年率+2.7%(8月)である。安定的に推移しているとは言え、2022年4月にウクライナ侵攻を機に+2.5%に上昇してから3年半に及び2~4%の高原状態が続いている影響は大きい。日銀の金融引き締め観測が絶えずくすぶるが、現状はさほど株価の圧迫要因になっていない。ドル円も予想に反して足元では円安気味に推移している。実質金利マイナスの長期化観測が背景だろう。
歴史的転換は始まったばかり
物価上昇の長期化は消費者心理を通じて景気や企業業績に構造的変動をもたらしている。これは現在も進行中だろう。過去今回並みの期間で同水準の物価上昇率は1980年代前半と1990年前後に2度あった。前者は高インフレ時代の終盤期で後者は資産インフレの余波が背景である。政策金利(公定歩合)はいずれも6%前後で今回とは全く状況が違う。戦後の日本経済において、高度成長やインフレは経験しているが、長いデフレ時代からの脱却は初めての経験だ。マクロ経済や企業業績に与える影響の分析・予測は簡単ではない。過去10数年程度のデータに基づくPERなど株価指標も見直しが必要だろう。
これだけの上昇を経ても、10年債金利1.6%に対して株式益回り(PERの逆数)は5.5%である。歴史的転換は始まったばかりとも言えるだろう。
裁選後のアノマリーには要注意
米国では4~6月期のGDPが3.3から3.8%に上方修正され、8月の耐久財受注額も市場予想に反して2.9%増加した。足元では、週間新規失業保険申請件数も減少し、一時的に盛り上がった利下げムードは沈静化気味だ。ただ、どちらにも行き過ぎない状況は緩やかなリスクオンが持続する要因になると考える。
日本株の長期上昇波動は揺るぎないとみるが、日経平均は4月の安値(3万1000円)から期間で6カ月、上昇率も50%近くに達している。スピード調整はいつあってもおかしくない。特に自民党総裁選後には一時的に弱含むとのアノマリーには要注意だ。年末にかけては上昇の勢いが鈍り、日経平均で4万5000円を挟み上下2000円程度の保ち合い相場との予想がメインシナリオだろう。
個別には?
個別には富士フィルム(4901)野村HD(8604)三井不動産(8801)など。
光世証券・エグゼクティブ・マネージャー 西川雅博氏プロフィール
1960年奈良県生まれ 大和証券入社 1990年より光世証券 法人部、営業部長、現在コンサルティンググループ担当
提供:株式市場新聞社 marketpress.jp


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