米中貿易問題は一つのピークを越えた
大阪G20での米中首脳会談が実現し、無事に大きなイベントを通過したことで金融市場ではひとまず安心感が広がった。米中の覇権争いは今後も長く続く問題として予断を許さないが、今回の合意で「お互いの経済に深刻なダメージが及ぶことは何としても避けたい」との力学が働くことが確認された。霧が完全に晴れたわけではないとしても、昨年来の大きな悪材料であった米中貿易問題は一つのピークを越えたのではないだろうか。
実体経済での追加材料が必要
日本株は戻りが鈍い印象だが、円高の影響でドルベースの日経平均では、7/1に10連休前の高値200ドル水準まで一気に回復している。海外投資家の比重が高い日本株特有の事情もあり、ここから上値を追うには実体経済での追加材料が必要だろう。
投資家心理本格好転にはもうしばらく時間
6月調査の日銀短観では大企業製造業の業況判断指数(DI)が前回3月から5ポイント悪化してプラス7になった。2四半期連続の悪化であり、プラス7は2016年9月(プラス6)以来の低水準だ。また、6/30発表の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.4で節目となる50を2カ月連続で下回った。足元の景況感の悪化懸念が株価の上値を重くしている。米国の金利低下から円高圧力が高まっていることもマイナス材料だろう。景気動向の見極めたいとの投資家心理が本格的に好転するにはもうしばらく時間がかかりそうだ。
今後2~3カ月間で景気指標は好転?
一方、世界的な金利低下傾向でリスク資産が拡大している中、裁定残高の売り残が増えるなど日本株の需給面からの下値不安は乏しい。
2016年は6月と9月調査の短観で業況判断指数(DI)が2四半期連続プラス6でボトムを打ったあと回復に転じた。株価もほぼ同時期に底を打ち、景況感の回復と共にその後1年以上に及ぶ大幅上昇相場を演じている。今回も米中首脳会談と在庫循環の影響で今後2~3カ月間で景気指標は好転するのではないか。特に次回9月調査の短観あたりがポイントになるだろう。
長期投資には魅力的な局面
当面の保ち合い相場を経て秋口から年末にかけては強気相場を予想している。老後2000万円の資産形成に向けて長期投資には魅力的な局面にあると見ている。個別では米国で好調を続けるSUBARU(7270)。
光世証券・取締役 西川雅博氏プロフィール
1960年奈良県生まれ 1982年早稲田大学政治経済学部卒、大和証券入社 1990年より光世証券 法人部、営業部長、現在コンサルティンググループ担当
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