今回の戻り相場はピッチが早く値幅も大きい
過去の歴史的暴落時からの反発局面と照らしても、今回の戻り相場はピッチが早く値幅も大きい。各国の政策対応が迅速かつ未曾有に大規模であったことが背景であろう。マーケットが先取りしてきた経済の早期回復に沿う兆候が出てきたことで、足元ではさらに安心感と楽観論が広がりつつある。当初多くの投資家が心配した2番底に陥る可能性は薄らいだとの見方が大勢のようだ。
過度の期待と悲観は禁物
一方、感染の専門家がパンデミック第2波の警鐘を唱えている中で、世界の政治力学はおしなべて制限緩和からの経済V字回復に働き、市場の期待も前のめりになりがちなことには注意が必要だ。感染長期化懸念が完全に払拭されない間はポディティブ材料に対する上昇の持続性は限られるであろう。過度の期待と悲観は禁物で、おそらく元に戻れないであろうアフターコロナ社会の構造転換をにらみつつ、一喜一憂せずに長期的視点から押し目買い戦略に徹したい。
2番底前提の売建ては危険
株式の需給動向は極めてタイトであり下値は限られそうだ。裁定残の差し引き売り越し額は2兆円を超えて過去最高水準にあり、下落時に備える日銀のETF買い入れインパクトも大きい。米国株の上昇要因の一つに高水準の売り残高とそれに伴うショートカバーが見られるようだが、日本株においても2番底を前提にした売建てポジションを抱えるのは危険であろう。
今後のコロナ感染と経済活動再開の状況を見極める
今期企業業績見通しについては、6割の企業が発表できない異常状態ではあるが、主力製造業では概ね前年比で7-9月期に8割、10-12月期には9割以上回復との見方が現時点のコンセンサスのようだ。そうした前提を元に通期目標が達成可能かどうか、グローバル市場における今後のコロナ感染と経済活動再開の状況を見極めたい。
主力銘柄の長期上昇は7月から?
個別銘柄ではマザーズ市場を中心にコロナ後の変化を見越した動きがすでに活発である。2016年のチャイナショックの急落局面では日経平均が2月に1番底をつけた後マザーズ銘柄が約3カ月間活況を呈した。当時はマザーズ指数が天井をつけた1カ月後の6月からは主力銘柄の本格上昇が始まっている。3月の大底後ここまで2カ月のマザーズ市場の値動きは当時と酷似している。今回も同様なら主力銘柄の長期上昇が7月から始まるパターンとなるがはたしてどうだろうか。
AIやオンライン関連を中心に長期成長期待銘柄を狙う
金融市場が混乱する中、WTI先物がマイナス価格になるなど様々な市場で経験したことない事象が起こった。単純な値惚れ投資は避け、企業分析に基づくベーシックな投資行動が望まれよう。グローバル化が後退し自国主義や大きな政府が台頭するだろうが、コロナ禍が社会のデジタル化を加速させるのは間違いない。NISA口座では投機的銘柄ではなく、AIやオンライン関連を中心に長期成長期待銘柄を狙いたい。
光世証券・取締役 西川雅博氏プロフィール
1960年奈良県生まれ 1982年早稲田大学政治経済学部卒、大和証券入社 1990年より光世証券 法人部、営業部長、現在コンサルティンググループ担当
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