ダブルボトムを形成
10月以降は日本株の変動率が拡大傾向にある。短期筋の売買で値動きが荒くなる一方、今のところ中長期のモメンタムには明確な変化は見られない。
具体的には、日経平均で10月4日につけた安値3万0500円水準をその後の下落局面で2回に渡って突きかけたものの割り込まず反発に転じたことが大きい。底割れを回避したことでダブルボトムを形成した格好になった。テクニカル面では今後も重要な節として意識されるだろう。
乱高下の背景は?
乱高下の背景は、株価変動要因が多面かつ複雑化していることがある。長引くウクライナ情勢と新たに勃発した中東問題、日本と欧米の金融政策のねじれ、中国の景気後退リスクなど不透明要因は増えている。加えて、日経平均で過去3万円~3万2000円の価格帯の滞留日数が少なく真空地帯にあることや足元の企業決算の影響も大きい。
円安恩恵銘柄は為替動向やや注意
9月中間期の決算発表はまだ中途段階だが、終わった分では業種、業態というより個別銘柄で大きなバラツキが見られ株価の反応も極端である。表面的な数字だけでなく、直前の株価位置と合わせて会社コメントや決算短信等で内容を掘り下げる必要がありそうだ。総じて半導体・ハイテク関連銘柄の不振が目に付くが、夏以降株価には相当織り込まれており、ここからは決算でさらに売り込まれたものは逆張りも一考だろう。円安メリットが出ている銘柄については下期の想定レートと今後の為替相場の推移にやや注意が必要と見ている。
米長期金利の上昇に一巡感
一時5%を超えた米長期金利の上昇にようやく一巡感が出ている。7~9月期のGDP成長率が+4.9%と強い数字だったが、足元ではCPIや賃金の伸び率鈍化、10月ISM製造業景気指数の低下など景気悪化の傾向が見られる。政策金利の引き上げは打ち止めの可能性が高まっている。ただ、FRBは今後も市場が楽観に傾くことに警戒を緩めず兆しがあればけん制を続けるだろう。米金融政策のかじ取りはさらに神経質で難しい局面になっていくとの認識だ。
金融正常化でも日本株には不利ではない
一方、日本では金融正常化に向けて動き出すという全く逆の局面である。米国では景気悪化やリスクオフがハト派始動の契機となり、日本では景気上昇やリスクオンが正常化へ向かうための条件となる。日米ともに政策発動の市場反応に惑わされないことが肝要で、正常化に向かう過程が必ずしも日本株にとって不利な要件ではないと見ている。
新NISAへの期待も
年末あたりまでの時間軸で見ると、地政学リスクや決算見通しなどネガティブ材料は相当部分消化しつつある。米国では年末に向け毎年株式需給がタイトになる時期にかかってくる。日本ではTOPIXの予想PER(12か月先予想)は依然14倍程度でバリュー株や高配当株を中心に割安感は根強い。来年スタートする新NISAへの期待も徐々に取り沙汰されるだろう。
個別では?
来年にかけては長らく調整を余儀なくされた半導体・ハイテク関連株の環境好転もあると見ている。当面は流動性の高い銘柄を中心に堅調な展開が期待出来そうだ。個別では、クボタ(6326)ローム(6963)野村證券(8604)など。
光世証券・取締役 西川雅博氏プロフィール
1960年奈良県生まれ 大和証券入社 1990年より光世証券 法人部、営業部長、現在コンサルティンググループ担当
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