インフレ下の銀行倒産【転ばぬ先のテクニカル】

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金融システム不安による急落とは驚き

2月28日の当欄で「3月メジャーSQあたりから雰囲気が変わる可能性」を指摘し、3月1日の当欄では「3月は星回り的に注意せねばならない月」とも指摘しましたが、まさか金融システム不安による急落とは驚きました。

SVB大半が25万ドル大きく上回る預金

米国で破綻したSVBはFDIC(米連邦預金保険公社)の管理下となりました。FDICは銀行が破綻した際に、預金者を保護する政府系機関です。FDICの預金保護は預金者1人あたり25万ドル(約3300万円)までです。無制限に保護すると、とてつもなく大きな規模になりかねないからです。ただ、SVBの預金はスタートアップ企業が多く、大半の口座は25万ドルを大きく上回る預金があったといいます。

預金者完全保護措置を承認

つまり、FDICの保護があっても、預金の多くは返ってこないおそれがあり、「金融システム全体へのストレスを減らし、金融の安定を支え、企業、家計、納税者、そしてより広い経済への影響を最小限に抑える」ために、バイデン大統領とイエレン財務長官はFDICとFRBからの勧告を受け、「SVBのすべての預金者を完全に保護する」措置を承認しました。12日に閉鎖が決まったシグネチャーバンクも同様の措置となります。

破綻劇は運用ミスが原因

今回の破綻劇はSVB社の運用ミスが原因です。預金者の半分近くを占めるスタートアップ企業は運転資金の回転が速いものですが、短期で引き出される可能性のある資金を償還期間の長い国債などに振り向けたことが要因で、そこにタイミング悪く、急激な利上げが直撃して含み損が急拡大してしまったということです。これは素人でも分かりそうな間違った運用です。そのため、SVBに血税を投入するとなると批判の声もあがるかもしれません。

金融機関へ飛び火避ける

しかし、政府が放置すると、預金を失った企業の倒産が多発し、テック業界のビジネスが連鎖的に行き詰まるおそれがあります。また、SVBのような経営基盤が脆い企業に対する疑心暗鬼も呼びかねません。更に、本来健全な銀行でも、不安から預金が流出しはじめ、経営基盤が突如揺らぐリスクもあります。当局は2008年のリーマンショックでの教訓もあり、金融機関への飛び火を避けるために全額保護を打ちだしましたので、今回の騒動はSVB個別の問題として、比較的早期に落ち着く可能性もあります。

世界的リスクマネー縮小につながる

ただ、難しいのは、インフレ下での銀行倒産ということです。今、更に同様のことが他行に及んだ場合、FRBは流動性供給を進めて鎮静化を計りたい一方で、流動性供給がインフレを助長してしまう可能性が高まるということです。そのため世界的なリスクマネーの縮小につながることは間違いないと思われます。

リバウンド始っても当面戻り売り

さて、日経平均は続落し、2月相場のBOX上限までUターンしてしまいました。先週も指摘したように、日経平均は「宵の明星」の天井型となり25日線まで下落しました。2月27日以降、BOXを上放れたことを考えるならば、押しは以前のBOX上限までと考えられます。ただし、リバウンド開始となっても当面は戻り売りとなるでしょう。本格上昇に戻るためには3月SQ値を抜け出す場合になるでしょう。

NY市場更なる下落の可能性

問題はNY市場の崩れです。NYダウは今月6日に25日線タッチで上髭陰線形成で頭打ちとなり、今回の急落で200日線を割り込んでしまいました。これはS&P500やナスダックも同様であり、しかも揃って一目均衡表の雲下限を割り込みました。更なる下落の可能性が高まったということです。

ドル円短期調整一巡なるか

また、ドル円もお伝えしたように200日線タッチで頭打ちとなり25日線を割り込んできました。こちらは一目均衡表の雲上限と基準線が意識される局面であり、この近辺で短期調整一巡となるのかどうかの注目段階を迎えています。

下値固まるまで様子見

いずれにしても、今回の預金者保護や通常より貸付上限が緩やかな融資プログラムに対するマーケットの反応を確認しつつ、下値が固まるまでは様子を見る必要がありそうです。

日々勇太朗

 

提供:株式市場新聞社 marketpress.jp
 

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